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【あらすじ・感想】青山 美智子 「リカバリー・カバヒコ」

リカバリー・カバヒコ

今回ご紹介する本はこちら。

青山美智子さん著 「リカバリー・カバヒコ」です。

「リカバリー・カバヒコ」のあらすじ

5階建ての新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。近くの日の出公園には古くから設置されているカバのアニマルライドがあり、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。人呼んで”リカバリー・カバヒコ”。アドヴァンス・ヒルに住まう人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明ける。

「リカバリー・カバヒコ」の感想

つい感情移入してしまう登場人物

この作品に登場する人物は年齢も性別もバラバラで、読者が感情移入しやすくなっています。全5編の主人公にはそれぞれこのような背景があります。

  • 中学生になって成績が悪くなった男子
  • ママ友との関係に悩んでいる女性
  • 同僚や顧客との人間関係に悩む若手社員
  • マラソンが苦手で怪我のフリをした小学生
  • 体の衰えや高齢の親との問題を抱えた中高年

このように人間関係にまつわる悩みや将来への不安を抱えており、自分と似た境遇の主人公に共感できる部分が多いのが特徴です。

現代社会の問題が浮き彫りになっている

各編の主人公はそれぞれ抱えた悩みを誰にも相談できずに苦しんでいます。

現代社会も同様で、

  • SNSの普及で他人がキラキラして見える
  • 競争社会で成果重視になり弱みを見せることができない
  • デジタルコミュニケーションが増え対人関係が苦手
  • 自己責任論や他人に干渉することが悪とされる

このような理由から気軽に悩みを打ち明けることができず、自分の中に溜め込んでしまう人が増えています。

悩みを打ち明けるメリット

人に悩みを打ち明けることは様々なメリットがあります。

自分だけで考え込むと主観的になりがちですが、他人に話すことで新しい視点や別の見方をすることができ、問題解決へのヒントを得られることが多いです。また、話すことによって自分の考えや感情が整理され、自分が何に悩んでいるのかを明確にすることができます。

この本の登場人物たちもカバヒコという相談相手を見つけたことで、自分を見つめ直し悩みを解消することができました。

まとめ

現代社会を生きる私たち誰もが抱えている問題や悩みがテーマになっている本作。

長編が苦手な方でも気軽に読める短編形式で、心が疲れたときに読むとリカバリーしてくれる一冊です。