万城目学さんの「鴨川ホルモー」を読んでの感想です。
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あらすじ
みなさんは「ホルモー」という言葉をご存知か。
そう、ホルモー。
いえいえ、ホルモンではなくホルモー。「ン」はいらない。そこはぜひ「モー」と伸ばして素直な感じで発音してもらいたい。
京都の街で巻き起こる、ばかばかしいけどどこか切ない青春小説。
主な登場人物
安倍(あべ)
本作の主人公であり、彼の目線で物語は進められていく。
2年間浪人生活を経て京大へ入る。
特定のシルエットをした鼻が好みで、それがきっかけで京大青竜会へ入会することとなる。
丸太町の下宿に住んでおり、さだまさしの大ファン。
高村(たかむら)
小学生のときに両親に連れら国外に出て以来、10年ぶりに日本に戻ってきた帰国子女。
葵祭のアルバイト終わりに安倍とともに京大青竜会への勧誘を受ける。
早良 京子(さわら きょうこ)
安倍が思いを寄せている人物であり、美しい鼻の持ち主。
普段はおとなしい性格であるが、恋愛面に関しては周りが見えなくなってしまうこともあり、気難しい一面も持ち合わせている。
芦屋 満(あしや みつる)
第500代青竜会随一のホルモー実力者。
自分で仕切ることを好んでおり、安倍とはそりが合わないことが多い。
楠木 ふみ(くすのき ふみ)
第500代青竜会女性メンバー二人のうちのもう一人。
大木凡人に似た、丸みを帯びた髪型と黒縁メガネを掛けていることから、安倍と高村の二人は陰で「凡ちゃん」と呼んでいる。
感想
タイトルの通り京都の鴨川周辺を舞台として話が進んでいくため、京都に馴染みにのある人は上賀茂神社や京都御所、鴨川デルタなど見慣れた、聞き慣れた場所がよく登場します。
前半は「ホルモー」の正体や京大青竜会のサークル活動を中心に書かれているが、高村から芦屋の彼女について話を聞いてしまうところから、物語はあらぬ方向に進んでいきます。
「ホルモー」や「オニ」たちの描写は細かく書かれており、現実世界では存在しないはずなのに頭の中でイメージを膨らませながら楽しむことができました。
こういった空想の生き物や物体は万城目作品によく登場するが、一体どうやって考え出しているのか感嘆するばかりです。
感想(ネタバレあり)
初めて万城目学作品を読みましたが、テンポ感の良い文章と京都らしいミステリアスな雰囲気がマッチしていてグイグイと作中に引き込まれました。
物語序盤は早良京子に恋心を抱きながらも、直接想いを伝えることができない様子が青春時代に戻ったような懐かしさを感じさせてくれました。ただ、鴨川べりで涼んでいたあの夜、早良京子が涙を流していた理由に芦屋が関係しており、良いように利用された安倍には同情するばかりです。
早良京子とは対象的に最後にようやく心を開いたのが楠木ふみ。居酒屋べろべろばあの新歓コンパで安倍が早良京子に一目惚れしたように、楠木ふみは安倍に一目惚れしていたのは驚きました。それまでの安倍に対する態度はお世辞にも良いものとはいえませんでしたが、自分の気持ちを素直に出せないところは安倍と共通しているところもあるのかなと感じました。
続編の「ホルモー六景」も早速読んでみたいと思いました。